人間力

「人間力」という言葉があります。

 

人間力も、単なる知識や経験だけではなく、悩みや苦しみを経て、そこから学んで実践することでこそ、初めてついてくるものだと思っています。

 

しかし、生まれたときから、何の挫折も葛藤もなくきたと誇ったり自慢したりしているような人には、残念ながら、人間に深みがなく、人間力に乏しい人が多くいます。

 

人は苦しみや挫折など、何か人生の壁や問題から抜け出したときに初めて、人の心を引きつけ、自分も人も大きく変えるほどの人間力がつく。

 

そうだとすれば、苦しみや挫折などの問題は、あなたの人間力を高める素晴らしいチャンスなのです。

 

それをチャンスと気づかず、生かせていない人が多いのは、本当にもったいないことです。

 

問題が多ければ多いほど、その人は成長しています。

 

もちろん私自身も、不慮の事故だとか、身近な人の心の病だとか、あるいは父親との別れなど多くの経験しました。

 

しかし、そういった大きな問題に出会うたびに、そこから素晴らしい学びを得て、自分を成長させることができました。

 

一方、自分にはまったく問題がないと思い込んでいる人、あるいは同じようにさまざまな苦しみや悩みなどの問題を天から与えられながらも、それを学びのチャンスだと思えなくて生かしきれないままにきた人には、残念ながら、深みは感じられません。

 

だから、自分を深め、人間力を身につけるためには、悩みや苦しみなどの問題があったほうがいいのです。

 

さらに、それをチャンスと思えるかどうかが、その人の人生の差であり、分かれ目になるのです。

 

ここにある企業のトップの言葉があります。

 

その企業は、業績が昨年度はあまりふるいませんでした。

 

その原因は、不況ということだけではなく、新しく雇い入れた人が会社のルールについていけず、能力も低かったのです。

 

それをフォローするために、ほかの社員の負担が増して、疲弊してしまい、すべての効率が下がってしまったからでした。

 

けれども、その企業のトップは、苦しんだ問題から学び、社員に対してこんな言葉をかけたのです。

 

「この1年は、たしかに業績としてはマイナスだった。

 

けれども、私たちにとっては素晴らしいプラスとなった。

 

ルールについていく能力のない1人の人のために、どれだけ周りが疲れるかということを、身にしみて学ぶことができたからだ。

 

また、それをフォローするために、あるいは、そんな人にどうしたらもっとしっかり働いてもらえるようになるかと、みんなが一生懸命に知恵を絞って、より良い仕組みを考えた。

 

だから、この1年で、みんなはものすごく考えられる人、より強い人間に成長することができた。

 

さらに言えば、この苦しみをみんなで乗り越えたことによって、やれるべき要件が全部揃ってきたから、来期については、なんら恐いものはない。

 

だから来期は必ず、プラスの業績でいたときよりも、もっと素晴らしいものにできるんだよ」

 

このトップの言葉には、まさに多くの真理と叡智が込められています。

 

人間は何か問題に突き当たったり、損失してしまったりしたときこそがチャンスです。

 

そうした機会がなく、ずっとプラスのままでいくと、視野が狭くなり、逆にさまざまな弊害が起こってきます。

 

いわゆる挫折知らずのエリートといわれる高学歴の人たちが、人間として成熟できていないといわれるのも、それゆえです。

 

ですから、もしもあなたが今、何か大きな問題や悩みを抱えているとしたら、その悩みや苦しみを恥じることは、いっさいないのです。

 

もちろん、問題を乗り越えるとき、苦しみや痛みも伴うことでしょう。

 

けれども

 

「ああ、これによって自分の人間力がまた高められるのだ」

 

「より強く豊かで愛情深い素晴らしい人間になれるのだ」

 

あるいは

 

「私はなかなか、がんばっているなあ。私の未来は明るいな」

 

というふうに明るい面に目を向けると、苦しみや痛みも少しずつ和らいでくるはずです。

 

そうなれば、もう大丈夫です。

 

あなたは必ずや、悩みや問題を素晴らしいチャンスに変え、より「人間力」を高めて、成長できるのです。

 

 

*1分で感動から転載

 

 

たきがみ博士
たきがみ博士

  旬(ときめき)亭

  亭主 たきがみ博士